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海外市場への進出は、ビジネスにとって大きなチャンスですが、その成功は「伝え方」に大きく左右されます。その中でも特に重要なのがローカライズ(最適化)です。

英語圏をターゲットにする場合、日本とは言語だけでなく、文化・価値観・ユーザー行動が大きく異なるため、単なる翻訳ではうまくいきません。本当にユーザーに伝わるウェブサイトにするには、言葉の選び方、デザイン、使いやすさ、すべてを英語圏の文化に適応させる必要があります。

直訳ではなぜ不十分なのか?

多くの企業が「英語に翻訳すればそれでOK」と考えてしまいがちです。しかし、それだけでは誤解を招いたり、信頼を失ったりすることもあります。

英語と一口に言っても、アメリカ英語・イギリス英語・オーストラリア英語など、使われる言葉やスペル、言い回しが異なります。

例えば:

  • 郵便番号:Postcode(英)/Zip Code(米)
  • 携帯電話:Mobile phone(英)/Cell phone(米)
  • 休暇:Holiday(英)/Vacation(米)

さらに、日本語の表現や敬語がそのままでは冷たく感じられることもあり、文化的なニュアンスやユーモアも直訳では伝わりません。

英語圏との文化的な違いに注意

フォーマルとカジュアル

日本語のビジネス表現は丁寧で控えめなのが一般的ですが、英語圏のマーケティングではカジュアルで親しみやすい表現が好まれます。

例:

  • 日本語:「ぜひご覧ください」
  • 英語:”Check it out!” / “Take a look at our latest offers!”

ただし、業界によっては(金融・医療・法務など)フォーマルな表現の方が適している場合もあります。シーンに応じて使い分けましょう。

時間感覚と納期

日本では納期や正確さが非常に重視されますが、英語圏では「便利さ」や「快適さ」を重視する傾向があります。

例:

  • 日本語の通販サイト:「当日発送」「○日以内にお届け」
  • 英語圏のサイト:”Easy returns” や “Customer-first service” など、体験重視の表現

「早さ」よりも「信頼感」や「ストレスのない使用感」が求められるケースもあります。

色とシンボルの意味

色や記号も文化によって印象が異なります。日本で白は「清潔さ」の象徴ですが、欧米では「無機質」「病院っぽい」と捉えられることも。赤も「セール」や「緊急」を表す一方で、「警告」の意味が強く出てしまう可能性もあります。

使用する色・デザイン・アイコンは、現地ユーザーにとって自然なものかを意識しましょう。

技術的な注意点

テキストの長さとレイアウト

英語の文章は日本語に比べて文字数が多くなることが多いです。漢字を使う日本語と比べると、同じ意味でも英語では長文になりがちです。

例:

  • 日本語:「カートに入れる」
  • 英語:”Add to Cart”

スマホで見たときにレイアウトが崩れないよう、レスポンシブデザインを活用しましょう。

日付・数字・単位のフォーマット

ユーザーが慣れている形式に合わせることが大切です:

  • 日付表記
    日本:2025年7月21日
    英語圏:July 21, 2025(米)または 21/07/2025(英)
  • 通貨表記
    日本円ではなく、ターゲットに合わせてUSD/GBP/AUDなどで価格表示を行います。

単位表記
 日本ではメートル法と摂氏(℃)が主流ですが、アメリカではインチ・ポンド・華氏(°F)が一般的です。

支払い方法

英語圏では以下のような支払い方法が一般的です:

  • クレジットカード/デビットカード
  • PayPal
  • Apple Pay / Google Pay
  • 分割払いやBuy Now Pay Later系サービス(Klarna等)

英語圏のユーザーが安心して購入できるよう、現地で主流の決済方法に対応することが大切です。

言語スタイルと地域差

挨拶や見出しのトーン

日本語の「ようこそ」「ご案内」にあたる言葉も、英語ではもっとカジュアルで感情的な表現が使われます。

例:

  • 日本語:「当サイトへようこそ」
  • 英語:”Welcome!” / “Great to see you here!”

英語では感情的・インパクトのある表現を好む傾向があり、エクスクラメーションマーク(!)もよく使われます。

イギリス英語とアメリカ英語の違い

ターゲットが明確な場合、それに合わせて英語のバリエーションを選ぶことが大切です:

  • 英(UK):favourite, organise, colour
  • 米(US):favorite, organize, color

グローバル展開の場合は、「国際英語(International English)」と呼ばれる中立的なスタイル(スラングやローカル表現を避けたもの)がオススメです。

よくある失敗と注意点

1. 機械翻訳に頼りすぎる

Google翻訳などをそのまま使うと、ニュアンスや文脈が伝わらず、不自然な英語になることがあります。

例:

  • 日本語:「猫に小判」
  • 機械翻訳:”Gold coin to a cat”(直訳)
  • ネイティブの自然な表現:”Casting pearls before swine”(本来の意味に近い)

機械翻訳は参考として使い、その後ネイティブチェックを必ず行いましょう。

2. 法律・規制の違いを見落とす

各国には異なる法律(個人情報保護法、返品規定など)が存在します。英語圏に展開する際は、現地の法制度に合った表記やポリシーが必要です。

3. 文化的な前提の違い

日本特有の表現(四季、敬語、アニメ文化、歴史的な出来事など)は、英語圏のユーザーに伝わらないことがあります。必要に応じて、現地に合う例やストーリーに差し替えましょう。

4. SEO(検索エンジン最適化)を日本語のまま考える

検索キーワードは言語ごとに異なります。日本で使われているキーワードをそのまま英訳しても、検索されない可能性があります。

例:

  • 日本語:「英語 勉強 アプリ」
  • 英語圏では:”Best app to learn English” や “English learning app for beginners”

現地で実際に検索されているキーワードを調査することが大切です。

まとめ

英語圏へのローカライズは、単なる翻訳ではありません。
「伝わる」「共感される」コンテンツづくりが成功のカギです。

文化的背景、言葉のニュアンス、使われているデバイス、支払い方法、トーン…あらゆる要素を現地の人の感覚に合わせて調整する必要があります。

信頼できるネイティブ翻訳者やマーケティングパートナーと連携しながら、本当に「現地のユーザー目線」でのローカライズを進めていきましょう。